センター長あいさつ
アルコール疾患ケアセンター センター長 笠井 秀夫

我が国では推定500万人以上の方がアルコール使用障害に該当すると言われています。そのうち、アルコール依存症の診断基準に該当する方は100万人ほどになりますが、依存症の治療を受けている方は、わずか5万人に留まります。
アルコール依存症の状態に陥った場合の治療は断酒が最も安全で有効な方法ですが、それ故に治療に対して強い抵抗感を持つ方が多く、ほとんどの方が治療につながらない現状があります。抵抗を減らすためにも、断酒一辺倒ではなく、酒量を減らす取り組みから始めたり、時には酒量をどうするかは棚上げし、随伴するさまざまな問題を解決するために話し合いを続けるといった柔軟な対応が治療者に求められます。また、依存症に陥る前の危険な飲酒状況の方に対する早期介入も非常に重要です。
当院はかねてより、アルコール問題に苦しむご本人の治療、ご家族の支援を行ってきました。平成30年度には、アルコール依存症専門医療機関に選定され、その役割を果たすべく努めてまいりました。この度、アルコール疾患ケアセンターを発足させ、研修により認定を受けた医師、公認心理師、看護師等の専門スタッフにより、幅広くアルコール使用障害の治療を展開していくこととなりました。診断、治療はもとより、ご本人、ご家族からの相談にも応じ、かかりつけ医との連携により、早期介入にも力を入れていく予定です。またアルコール使用障害についての正しい認識を広める目的で研修会等も行います。
当センターの活動により、アルコール使用障害に苦しむ方々がお一人でも多く治療につながり、回復されることを願っています。
診断
アルコール使用障害とは、アルコールの不適切な使用により、何らかの心身の問題、社会生活上の問題が生じている状態を指します。従来のアルコール依存症の概念よりも広く、依存症にまで至っていない「危険な飲酒」や「有害な使用」も含む疾患概念です。WHOやアメリカ精神学科で定められた診断基準に基づき、その重症度を判断します。
※当センターでは、必要に応じて血液検査やCT・X線検査、心理検査などを実施します。
治療
アルコール使用障害は適切な治療や支援を受けることで回復する事ができます。治療目標は「飲酒量低減」と「断酒」があります。
外来
アルコール使用障害の外来プログラム
薬物療法・グループ療法・カウンセリング・飲酒量低減療法を組み合わせ、ユーザーに合った治療を行います。
入院
アルコール使用障害の入院プログラム
身体合併症や離脱症状の治療(解毒治療)を行った後、断酒に向けての本格的な治療を開始します。当センターではクリニカルパスを活用する事で、安全で適切な医療を提供できるよう取り組んでいます。クリニカルパスとは、入院から退院までに必要な治療・検査・ケアなどを記載した計画表のことです。治療計画が見えることでご本人やご家族の安心感にもつながります。