「物忘れ=認知症?」と考えるその前に

海辺の杜ホスピタル 精神科医師 林田 圭祐

時折、このような相談を受けます。「最近物忘れが多くて・・・。私、認知症でしょうか?」まず、一般にいうところの「物忘れ」は、大ざっぱに「一度覚えたことを忘れること(想起の障害)」と「得た情報を記憶として定着できないこと(記銘・保持の障害)」に分けられます。
忘れること自体は、覚えることと同様に、人間の脳における重要な機能の一つです。不要な情報を取捨選択し、古い記憶から消去しなければ、膨大な情報量をとても処理しきれません。
また、認知症でなくても、うつ病などの脳機能が低下する病態や、栄養素欠乏、ホルモンバランスの異常といった身体疾患によってもインプットの問題は起こり得ます。注意欠陥多動性障害(ADHD)による集中力の問題や、睡眠薬などの薬剤の影響といった可能性もあるでしょう。脳のパフォーマンスとは、心身におけるさまざまな要素により容易に左右されるものであり、認知症を疑う前に「物忘れ」という現象に何か原因がないか、探っていく姿勢が大切と考えています。