病名と告知④ 認知症と本人への告知<前編>

海辺の杜ホスピタル 医局長 町原 敦

認知症(特にアルツハイマー型)の方は、病識に乏しく、それを取り繕う行動を取ることが多いといわれています。物忘れを尋ねても、「全然ありません」と言ったり(同席の家族が眉をひそめる)、自分が財布をどこかに置いたときに、そのこと自体を忘れるだけでなく、「〇〇が盗んだ」と自身の記憶を埋める形でエピソードをつくりだしたりすることがあります。
これらを妄想とか単に病的症状として、すぐに治療(主に薬物療法)の対象にするのかどうか。物忘れは中核症状としても、その後出てくる症状(行動)には何かしら意味があるのではと考えてみると、自分の記憶がどんどんなくなっていくという不安・恐怖を緩和する効果や、自尊心をなんとか保つ効果もあるのではないかと考えます。
とはいえ、周囲を困らせ、結果的には本人も損をしてしまう行動も多く、家族全体で穏やかに過ごせるようざまざまな工夫を考えていくことになります。それを踏まえた上での必要最小限の薬物療法は有効と考えます。