治療、教育、育ち②

海辺の杜ホスピタル 院長 岡田 和史

偉大な臨床心理学者であった河合隼雄先生は、心理療法によって「治すのか、治るのか」という問い掛けをされました。先生は、その両面があるものの、クライアント(患者さん)が自ら「治る」ことの方が大切だと強調されました。
私自身の臨床経験からも、精神的、心理的な治療においては、治療者が「治す」ことよりも、「治る」力が発揮されやすい環境を整え、「治る」力が育つのを待つことが必要な場合が多いように思われます。外科的な治療、例えば骨折において手術をして骨がずれないように支えを入れたとしても、最終的に骨がくっつくのは骨の細胞が成長し頑張って「治って」いるからなのです。
しかし、このように「育つ」のを待つことは、ご本人にとっても家族や周囲の人にとってもなかなかつらく忍耐のいることです。いつまで待てばよいかがはっきりしない場合はなおさらです。私たち精神科の医師や心理士の仕事はその忍耐を支え、付き添うことにあるともいえるでしょう。